『「納品」を無くせばうまくいく』はSIerで働く社畜エンジニアへ捧げる本だ。

ITゼネコンが築き上げた日本のSIerモデルは、見直される時期になっているのかもしれません。人月も納品も無い”顧問契約”という新しい受託開発の形が話題になっています。

作品概要

これまでの「一括請負」には、予算・人員・納期が限られるなかで、開発企業は疲弊していき、ユーザー企業も料金に見合う満足度を得られないという根深い問題がありました。

こうした通弊を解決するのが「納品のない受託開発」。これは、開発企業がユーザー企業と月額定額制の顧問契約を結ぶことで、納期を廃して、開発から運用までをトータルで継続的にサポートするもの。

従来とはまったく逆の発想をゆく新たなビジネスモデルを考案し、日々実践する経営者が業界の構造的な問題に鋭く切り込み、新たなソリューションを提示します。

Amazon作品紹介より

元エンジニアとして思ったこと

実は私、新卒から7年間ほどSIerでエンジニアとして働いていました。仕事を”請ける”側として感じていたモヤモヤ感は、まさしくこの本に書かれていることそのもの。

ソニックガーデンの事業コンセプトに、その全てが詰まっていると言っても良いでしょう。こういう会社で働いていたら今もSIerに勤めているかもしれないなぁと思いました。

本当に役立つシステムを作ることがエンジニアの仕事である。

一括請負となると、作るべき機能を最初に決める必要が出てきます。それが要件定義です。要件定義をすると、作っている間は良いかもしれませんが、出来上がった頃に市場環境が変わってしまい、使い物にならないものが出来上がるリスクが出てきます。しかし、一括請負で受託している開発ベンダーは、「開発する」ということだけを価値とするため、そのソフトウェアが使えるモノでも使えないモノでも関係なくなってしまいます。こうしたスタンスは、お客さまにとって嬉しい訳がありません。

要件定義で決めた通りの成果物なんて絶対に作れない。

「一括請負での受託開発」でのお客さまにとってのメリットは、要件定義さえ出来れば予算が確定でき、少なくともソフトウェアそのものを、その予算範囲内で手に入れることが出来る、ということでしょう。つまり、完成リスクを開発ベンダーが引き受けてくれることが最大のメリットになります。
しかし、実際は要件定義という未来を予測することが難しく決まらないまま開発に入ることがあったり、結局、要件定義で決めた内容では本当の要件を満たすことができずに途中で仕様変更とそれに伴う追加費用が発生し、最終的にできあがったものも満足のいくものにはならないものの、開発ベンダーは去ってしまって、メンテナンスができなくなる、ということが起きているのではないでしょうか。

エンジニアを「人月」というモノサシで図るのはおかしい。

「一括請負」で使われる見積もりの単位は「人月」です。何人がどれだけ働くか、という指標で引き受けますが、これも問題があります。人月とは結局は時間契約ということになるのですが、「一括請負」ということで求められるのは「完成」することです。絶対に完成させることを約束する際に、時間で契約するということは、担当するエンジニアに求められるのは質よりも単価の安さだけになってしまいます。そうすると、お客さまにとっては優秀なエンジニアに担当してもらうことができなくなります。

本にもあるように、大規模開発になってくるとどうしてもこの方法を取らざるを得ないのですが、エンジニアにとってそれが本当に幸せなのかと言われると微妙ですよねぇ。

私も今またSIerに戻ったとして、要件定義6ヶ月・開発18ヶ月・総開発300人月とかの大規模プロジェクトに入って毎日残業みたいな生活は、もうできませんわ・・・。

社畜エンジニアになってしまっている人は、一度読んでみると良いですよ。このやり方が全て正しいとは言いませんが、少なくとも人月で縛られている生活よりは幸せになれるはずです。

ソニックガーデンはエンジニアの応募数増えているだろうなぁ。